荘川研究所がある岐阜県飛騨地方の、新年の迎え方や文化、習わしなどについてご紹介していきたいと思います。
今回は、年取り(大晦日の夜に家族・親族が集まり、ごちそうやおせち料理を食べて年を越します)に欠かせない「塩ぶり」をご紹介します。
※画像はイメージです。
飛騨の年取りに欠かせない「塩ぶり」
飛騨の家庭では大晦日の夜、遠くで暮らす家族も実家に戻り、みんなそろって新年を迎えます。食卓にはさまざまな「おごっつぉう(ごちそう)」が並びますが、その中でも欠かせないのが「塩ぶり」。飛騨の人々が口をそろえる定番の一品です。
今も残る「塩ぶり街道」
成長につれて名前が変わる出世魚のぶりは、昔から縁起物として食べられてきました。中でも、岐阜県のお隣、富山でとれるぶりは最高級品。海から遠かった飛騨では、海の魚は貴重で、年に一度味わえる、まさにごちそうだったといえます。
富山湾で水揚げされたぶりは、かつては腐らないように塩漬けされ、狭く整備されていない山道を3日ほどかけて飛騨まで運ばれていたとされています。飛騨を経て信州まで運ばれると、塩がさらに馴染んで独特の旨味が増し、「飛騨ぶり」として高値で取引されたとか。現在でも富山から飛騨、信州へ抜ける道は「塩ぶり街道」と呼ばれています。
交通網が発達し新鮮なぶりが届けられるようになった今でも、塩ぶりは飛騨の人たちのソウルフードとなっています。