人間が生きていくためには、食事から栄養を摂取しなければなりませんが、そのための消化・吸収・排泄を行うのが胃から肛門までつながる「消化器」です。その中で、胃はみぞおちあたりにあり、食べ物を粥状にすることで、消化を助けています。また、強力な胃酸の力で殺菌も行っています。
健康な胃では「胃酸分泌」(食物を消化するために胃酸を分泌する作用)「粘液分泌」(胃酸から胃を守るために粘液を分泌する作用)「蠕動(ぜんどう)運動」(食物と胃酸を混ぜ合わせ、十二指腸へ運ぶ作用)という3つの作用がきちんと行われています。しかし、この3つの作用のバランスが崩れると胃の不快症状として現れます。
3つの作用のトラブル
通常は3つの作用が上手くバランスをとっていますが、何らかの原因によってこのバランスが崩れてしまうことがあります。
その要因としてまず「アルコール」が挙げられます。アルコールは「食前酒」を見てもわかりますが、少量のお酒は胃酸の分泌を促し、食欲をさそう働きがあります。しかし、大量に摂取すると、胃が強く刺激され、胃酸と粘膜のバランスを崩し粘膜が荒れる原因となります。同時にお酒は胃の蠕動運動機能を低下させてしまうので、健康な胃を保つ3つの作用全てに影響を与えてしまいます。
また、「ストレス」も胃に大きな影響を与えます。その原因として、自律神経の働きを乱すことが挙げられます。通常は自律神経によって胃酸は制徇されていますが、ストレスによって自律神経の調整機能が狂い、3つの作用のバランスも狂わせてしまいます。「喫煙」も胃に悪い影響を与えます。タバコは血管を収縮させる作用がありますが、喫煙によって胃の血量が減少し、酸欠状態となり、その結果機能低下を招きます。また、喫煙する方に「胸焼け」を感じる方が多いと言いますが、これは、胃と十二指腸とが接する筋肉を司る自律神経が乱れ、十二指腸液や胆汁が胃に逆流するためです。それによって胃の粘膜が傷つけられてしまうのです。その他、薬・加齢・ピロリ菌なども胃を悪くする原因となります。
胃を守るために
胃を守るには、普段の食生活を見直しましょう。まず、規則正しい食事をしましょう。胃が悪く食欲がないからといって食事を抜くと、胃が空っぽの状態が長くなり、余計に胃酸のせいで胃が荒れてしまいます。1日3回の食事をきちんと摂取しましょう。また、寝る直前の食事は胃に大きな負担をかけるので控えましょう。
また、早食いは胃の負担が大きくなります。また、空気も一緒に飲み込むのでゲップの原因にもなります。よく噛んで唾液と食物をしっかりと混ぜ合わせると胃の負担がかなり減少します。また、満腹にしてしまうのも良くないので腹八分目を心がけましょう。そして食後20~30分は休憩をとると胃の消化を助けます。また、乳製品は、胃の粘膜を守ってくれます。飲酒の前に、牛乳やヨーグルトを取ることをお勧めします。乳製品の他にもチョコレートを1粒食べるだけでも効果があるとも言われています。その他、緑黄色野菜、果物などを日頃の食事に加えるとよいでしょう。今年の年末・年始は元気な胃で過ごしてくださいね!